こんな絵を、実際にご自分のお子さんが描くのを見たことがある方は多いでしょう。頭から直接脚がはえているこれらの絵は「頭足人」(とうそくじん)とよばれています。
このパターンは、世界中の幼児の絵に見られ、欧米では「オタマジャクシ」(tadpole)とよばれています。じっさい、脚を一本しかかかない例もありますし、手よりも先に脚がはえてくるところはオタマジャクシの成長に似ています。
頭足人には、なぜ胴体が描かれていないのでしょう?
グッドナウという研究者は「頭」か「脚」のどちらかに胴体が含まれているのではないかと考えて、次のような実験をしました。
まず、3~4才の子どもたち約80人に頭足人を描いてもらい、そのあと「おなか」(stomach)を描き加えるように子どもたちに求めました。おなかを描いた場所が、その子が胴体だと思っている場所にちがいない、というわけです。
*グッドナウの実験
丸を大きく描いた子は丸のなかに「おなか」を描き、脚を長く描いた子は、脚の間に「おなか」を描いた。
ジャクリーン・グッドナウ著 須賀哲夫訳「子どもの絵の世界」(1979年サイエンス社)より
結果は子どもによってまちまちでした。ある子は丸の中におなかを描き、ある子は脚を表す2本の線の間に描きました。けれどもよく調べてみると、丸を大きく描いた子は、丸の中におなかを描き、脚を長く描いた子は脚の間におなかを描く傾向があることがわかりました。胴体は、描かれていないけれど、存在しているのでしょうか。あるいは、子どもたちはおなかを「むりやりこじつけて」描いたのでしょうか?頭足人の謎は深まるばかりです。