幼児の絵は子どもが五感を通して感じた世界を理解していくいとなみのひとつです。それは美術や文字や図に発展する母体ですが、そのどれでもなく、言葉に近いものです。
子どもは対象をそれぞれの部分にわけ、それを線や点におきかえて紙に描きます。これは言葉の世界でいえばそれぞれを単語におきかえて文を作る作業にあたります。この作業をとおして、子どもは身の回りの世界がどのようにできているかを理解していきます。
大人は頭にイメージを描いてから描きますが、子どもはまだ形になっていないイメージと、目の前でだんだん形になっていく絵とのやりとりの中で描きます。描くことでイメージは形を持ち、描いた形はイメージとしてふたたび子どもの心に取り込まれます。
この造形の仕組みは粘土や木工、紙工作などでも同じで、イメージと形のやりとりが子どもの想像力を育てます。
子どもの造形をのばす方法はなんといっても、たくさん描き、たくさん作ることです。
幼児クラスでは、お家に帰ってから描いたり作ったりするきっかけになるように、個人での制作のほかに、ごっこ遊びを軸にした共同制作をひとつの柱にしています。
「大きな絵」では、アトリエいっぱいにひろげた紙の上でごっこ遊びを楽しむ中で、絵が苦手な子にも描くきっかけを作ります。ねんど遊びでは200kgの陶芸用粘土をアトリエいっぱいにひろげ、粘土の世界で遊びます。
描くとき、作るときに大切なのは、わくわくする気持ち。遊びの中で、子どもたちの気持ちは自然に動きはじめます。